2019-12-06

アフターFITの世界で輝く「再エネの価値」とは?

FROM:solarjournal


FITの次の制度として「FIP」が議論され、具体的な導入案も出てきている。アフターFITの世界はどうなるのだろうか? エネルギージャーナリストの北村和也氏が、再エネ業界の先を読む好評連載コラム第10回。

FIT制度の終了に向けての議論が進んでいる。9月中旬に経産省の有識者の小委員会で示されたFITに代わるシステムがほぼ了承され、制度の枠組みとしての終了は決まったといってよい。そもそも、再エネの電気を固定した値段で高く買い取る制度がFITであり、原発事故の翌年に日本でも導入された。これが10年に達しないうちに一部を残して終息となるが、「早すぎる」「いや十分機能は果たした」と議論は尽きない。


なぜFIT制度が終わるのか

FIT制度とは再エネ発電を増やすことを目指すものであり、いずれ目的が達成されればこの制度は必要なくなる。つまり、終わってなくなることが目標という珍しい法制度である。ところが、現状での再エネ電力の割合は水力を除くと10%を超えた程度で、客観的に見ても十分とは言えない。

ましてやいずれ再エネを主力電源にするというのだから、道半ばどころかいまだ端緒でしかない。再エネが不十分なのは隠しようがないのだ。有識者が話し合っているのはFIT制度を止めるということだけでなく、次の制度をどうするかでもある。


これまでの経緯を見ていると、次のような感情を中心とした議論が背景にあるのではないかと思わせるものがある。現行のFIT制度は太陽光発電ばかりが増えてバランスが悪いし、一部であるが不当に利益を出したり、地域を乱開発したりとけしからんことが多い。また、賦課金が高くなりすぎてこちらも困ったものだ、というのが、FITを止める最も強いモチベーションのようだ。


今回のコラムでは、このあたりのはっきり言って薄い議論には入り込まない。もともとこの制度は大地震の後の対応で慌てて出来上がったものであった。ドイツなどの精緻な数字の組み込みによるEEG(ドイツ版のFIT制度)とは違い、誕生時点から突っ込みどころ満載であった。

再エネの電気を増やすことが目的なのに、いつまでにどのくらいまで増やすかの数的な目標がない。目標の数字が無いのだから、賦課金がどうなるか、どうしたいかの設定もなく、後から「高額すぎる」と言われても首をかしげるばかりである。


そうかといって、私はFIT制度導入が間違っていたという意見には全く与しない。正しかったと確信している。実際に再エネ電源が劇的に増えてきている事実は歴然としているし、もし導入されていなかった時の再エネ後進国日本を想像すると恐ろしいばかりである。制度に問題はあったが、やってよかったのは間違いない。

とにかく、現状では再エネはまだまだ足りないので、FIT制度とは別の仕組みで増やすことが進んでいると理解してもらいたい。重要なのは、それがどんなもので、これまでと何が違ってくるかである。


新しくやって来る制度と日本の市場の公平性

新しい仕組みは、ドイツでのFIP(フィード・イン・プレミアム)をお手本にしていると思われる。細かい説明は避けるが、これまでのように、野立ての太陽光発電なら1kWh当たり○○円という固定の価格で買い上げられるのではなく、市場での取引を原則とする。


ただし、事前に決められた価格を市場価格(売却価格)が下回った時には差額が補填され、事業の安定性を保つ仕組みだ。事前の価格はドイツなどと同様に入札で決まる方向である。

発電事業者は、新しく作る再エネ施設での電力をいくらで売電するかという入札価格を決めていくことになる。その決め方は、今後の市場の変動(=需要家の動向)を見ながらとなるが、ここに重大な問題がある。

市場価格が恣意的に動かされるなど、市場の公平性や透明性が確立していないと市場価格の信頼性が低くなり、FIPでの売電リスクは当然大きくなる。つまり、FIPには成熟したマーケットが必要なのである。これを日本の市場がクリアしているのだろうか。


日本のマーケットはいまだに大手の旧一般電気事業者などの影響が大きすぎて、とても安定的に機能しているとは言えない。本来であれば発送電の分離がなされた後に電力の小売り自由化をすべきなのに、日本では順番が逆で、分離とFIPの導入がほぼ同時期になる。市場の信頼がないのに、市場価格を基準とする制度を導入するのだ。識者の中には、ここに疑問符を掲げる人も少なくない。


前述したように、今回の改定では賦課金を減らすという目的がかなり前面に押し出ている。FITは導入される発電容量がわかった段階で年間の賦課金の総額がほぼわかるが、FIPは最低価格が保証されるだけなので賦課金の総量は事前に読みにくい。


確かに市場価格が基準価格を上回っていれば賦課金は出ていかないが、市場価格が大きく下がれば想定以上の賦課金が補填される可能性もある。つまり、本当に賦課金が減るかどうかも市場次第となるのだ。


発電事業の基準が変わるということ

FIT制度スタート初期の事業、特にメガソーラーはとにかく超安全なビジネスだったというのが、衆目の一致するところであった。FITは認定された価格が20年先まで保証されて利益が固定化されるのだから、こんな楽な事業はない。つまり、再エネの発電事業の価値を判断する『基準』がFITの価格であったといえる。


ある一定の広さの土地がある。年間の平均日照時間のデータを見る。置けるパネルの量が決まり、建設費を想定する。FITの買取価格はわかっている。よって、「20年間で○億円の利益」とすぐに計算できた。数字さえあれば、2,3分の世界である。事業をやるかやらないかの判断もあっという間ででき、誰でもほぼ同じ答えが出る。

さて、FITが終わってその『FIT基準』がなくなる。今後の基準は「発電した電気をいくらで買ってくれるか」である。ただし、FITのような固定ではなく、電気を使うお客さんが決めるのだ。通常は市場を通じてということになる。


確かにFIPはあるが、市場での不確定要素はずっとついて回る。ある意味で、もともとの資本主義社会のシステムに戻るということでもある。


ところが、実はここに別の新しい基準が現れようとしている。それを忘れてはこれからの発電に係るビジネスはできないという重要な基準である。


それが「再エネの価値」である。これまで電気はみな同じで色も付いていないとよく言われてきた。「1kWhは1kWhで同じ働きをして同じ価値だ。だから安く提供できるものが勝つ」と。ここにきて、風向きは大きく変わってきている。ご存知のように、世界的な企業はRE100にこぞって参加し、再エネ電源で企業活動を進めることを競いはじめた。日本企業のRE100参加は23社までに膨れた。


さらに、自治体や官公庁、中小企業が参加できる再エネ100%協議体『再エネ100宣言RE Action』が10月9日に誕生した。FITという基準が消えようとするときに、再エネという新しい価値が力を見せてくるのは偶然ではない。もともとFITの買取価格は再エネ拡大のためであり、国が無理矢理、価値を決めて上乗せしたものであった。それが、一定の役割を果たして舞台裏に下がっていく。代わりに民間企業が今度は自らで価値を加えて舞台に上がってきたのである。


再エネの価値はだれが決めるのか

すでにFITの電力売却を前提にせず、再エネ発電自体をビジネスにする事業者が現れてきている。


FITでは、発電事業の事業性は買取価格でほぼ自動的に計算されてきた。一方、今後は、基本的に卸売市場の平均価格と発電単価を比べて、利益が見込めるかどうかを判断することに戻る。


しかし、再エネ電力ビジネスでは、市場の平均価格に再エネの付加価値分が加わることになる。再エネ電力を普通の電気より少し高く買ってくれるかもしれないのである。その分、事業の可能性が広がることになる。


今後の発電事業のひとつのポイントはこの付加価値をどう把握できるかにかかってくる。これを客観的に知る方法のひとつは、現状では、非化石証書の入札の動向である。ただし、最低価格の1kWh当たり1円30銭では昨年度は99%以上が売れ残った。一方、Jクレジットの1kWh当たり90銭を少し超える額ではほぼ完売になっている。市場に出る量の違いもあって一概には言えないが、1円を切る数字がある程度ベースなのかもしれない。


一方で、マーケットよりさらに確かなのが、顧客の動向そのものである。例えば、
RE100に参加する企業に問うてみればその意向の一端を知ることができる。TPO(第三者所有方式)やPPA(電力販売契約)というシステムは、より顧客と密着して再エネ電力を供給する仕組みだ。アフターFITとは、自らが顧客の志向を捉えて、顧客を開拓する世界でもある。


また再エネの価値は、それを生み出す地域の価値でもある。遠い場所から大量の原料を運んで電気を作り出すマスのエネルギーの時代は過ぎ去りつつある。再エネは地域のエネルギーであり、地産地消の価値も含まれるのだ。新しい価値を生み出して活用するポテンシャルは地域にあり、それをいかに地域内で使えるようにするかで、地域の将来は決まってくると言っても過言ではない。



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